本展は、建築を構成する組物・障壁画・座敷飾や、建築をあらわした図面・絵画・模型などを紹介しながら、建築のさまざまな情報がどのように伝達し変容したのか、その技法や知恵、意味や背景に迫る日本建築史の新しい展覧会です。

 建築はさまざまな要素により成立しています。例えば、組物や彫物などの実在の建築を成立させる「もの」。あるいは、ものや人間とのさまざまな相関により拡がる「空間」。大小の規模をもつ眼に見えるものもあれば、象徴的な世界観や社会背景を秘めた眼に見えないものもあります。これらの情報は、時代と地域に即した人々の知恵や技術のもと、建築やその古材、雛形や絵画、図面や書物などを介して、海や陸を越え、日本各地へと伝わりました。そして、時に形態や意味を変えながら、やがて固有の顔をもつ建築として再び組み立てられ、具現化しました。このような建築をめぐる情報の伝達と変容が繰り返され、豊かな建築の歴史が紡がれていったのです。

 本展示は大きく二部により構成されています。第1章では、「もの」と「空間」別に、建築にみる個別の「かたち」がどのように伝わったのかを紹介します。第2章では、建築の情報がどのような大工技術や図面表記法といった「わざ」により伝えられたのかを紹介します。「伝わるかたち」の多様な類型と、時代ごとに展開した「伝えるわざ」。建築の情報が伝達し変容していった歴史へと、両側面から迫ります。本展覧会により、日本の建築が古から今にまで伝わった背景をめぐって、人々の思いや物語を知るきっかけになると幸いです。
 

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