
博物館で守られる「モノ」-資料を遺す保存科学の仕事-

博物館での大切な仕事の一つに、実物資料としてあるゆる「モノ」を後世に遺すということがあります。そのままの状態では劣化や変質の過程をたどる様々なモノを、どのようにしてより長く遺していくことができるのか考え、手助けをするのが「保存科学」という研究分野です。
展示室では、「『モノ』を調べる」、「『モノ』を遺す~切り取る・剥ぎ取る~」、「『モノ』を遺す~保存処理~」、「展示室・収蔵庫で『モノ』を守る」という4つの視点から、博物館で守られている実物資料とともに、当館の保存科学分野の取り組みについて紹介しています。ここでは、実物資料の一部をご紹介します。
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県指定文化財 木簡「鳥 習書木簡」(宮城県多賀城市/多賀城跡/8世紀)
「鳥」の文字を練習した木簡です。

県指定文化財 木簡「鳥 習書木簡」の赤外線写真
墨で書かれた文字や絵は時間の経過とともに薄くなり、見えにくくなることがあります。赤外線写真により、肉眼では見えにくい文字や絵を観察することができます。

錠前と壺金具(宮城県多賀城市/多賀城跡/錠前:8~10世紀、壺金具:8世紀後半)
古代の役所などで使用されていたと考えられる鉄製の錠前と、それをかける金具です。

錠前のX線写真
X線写真により、錠前のさびで覆われた内側や鍵の差し込み口などをみることができます。

横穴墓側壁の切り取り(宮城県亘理郡山元町/合戦原遺跡/7世紀後半~8世紀前半/山元町教育委員会蔵)
横穴墓の内部側壁を試験的に切り取ったものです。遺構そのものを、現地から切り取って保存する方法を「切り取り」といいます。裏側から加工することで、実際の表面を残します。
宮城県山元町の合戦原遺跡では、横穴墓で線刻画が発見されました。現地での保存が困難であったため、やむを得ず「切り取り」して移設保存することになりました。