金小札黒漆五枚胴具足(八代藩主伊達斉村所用)
浅葱糸威黒漆五枚胴具足(雪下久家作)
胴の前側裏に「雪下久家作」、後側裏に「八幡大菩薩」の銘があります。雪下久家は文禄・慶長年間(1592~1614)に会津を中心に活躍した甲冑師で、弟子らとともに政宗が仙台に呼び寄せたという伝えもあります。伊達家に伝わった政宗所用の黒漆五枚胴具足も「雪下久家作」と記録にあり、また政宗の廟所から出土した五枚胴具足とも、この具足は形状がよく似ています。胴以外は江戸中後期に仕立て直されています。兜の「愛宕山大権現守護」の前立から、この具足は片倉家中のものである可能性が高いと考えられます。
金小札黒漆五枚胴具足(八代藩主伊達斉村所用)
仙台藩八代藩主伊達斉村(1774~1796)が、数え年十三才時の具足着始の儀式に着用したと思われるものです。五枚胴は、五枚の鉄板で造られることからその名が付き、仙台藩の藩主や家臣たちがよく用いたことから、仙台胴とも呼ばれました。歴代藩主は必ず五枚胴具足を製作し、藩祖政宗の具足を踏襲しました。この具足は、草摺などに金の白檀塗を施し、緋色の糸を用いた華やかな仕立てになっています。
[参考]萌葱糸威胴具足
胴は木製の小札を萌葱色の糸で綴る(威す)形式で、五枚胴などと違って鉄板などを用いず、伝統的な方法で製作されています。前胴上部に付された環など後補の部分もありますが、全体として当初の形態をよくとどめています。兜吹き返しの向鶴紋から、南部家に関わる具足であると考えられます。