本展では、石巻を主なフィールドとした楠本政助のコレクションを紹介します。楠本はおもに昭和30年代に石巻の代表的な遺跡の沼津貝塚や南境貝塚などの発掘調査や表面採集を行い、精力的に遺物の収集に努めました。特に骨角器を中心として狩猟・漁撈具の製作や使用法に関する研究では、多くの実験を行い、「実験考古学」と呼ばれる分野を切り拓きました。縄文土器の復元にも優れ、高く評価されています。多くの論文を執筆するとともに、青少年や一般向けのわかりやすい本も出版し、「縄文人の釣針」は中学校の国語教科書にも採択されました。
その膨大なコレクションは平成9年に東北歴史資料館に寄贈され、東北歴史博物館ではテーマ展示、あるいは当館研究紀要として公開してきました。東日本大震災で自宅を失ってからも、後進の育成に努めて来られましたが、2021年にお亡くなりになられました。
楠本が石巻とともに歩んだ考古学を振り返ります。