文献資料の少ない東北古代史研究にとって、同時代史料である木簡が果たす役割は大きい。多賀城跡及び山王・市川橋遺跡から出土した八世紀前半から十世紀前半までの木簡は、物資運搬の際の荷札や、呪術的な内容のもののほか、鎮守府関係、軍団関係の木簡や大宝二年美濃国戸籍などの記載方法に則った戸籍抜書木簡などがある。このように本木簡群は、陸奥国府または鎮守府としての多賀城での政務の内容を示すものや、奈良時代・平安時代初頭の蝦夷政策を反映したものなど、多種多様な内容を含み、律令国家による東北経営の実態を知ることができ、大変貴重である。以上のような理由により令和5年6月27日付けで、450点の木簡が重要文化財に指定された。今回の展示はその一部を紹介するものである。