宮城県では、意匠を凝らした切り紙細工を屋内の神棚から屋敷を守る氏神まで、家々の信仰対象に飾る習慣が広く見られます。正月に備えて近くの神社から配られる切り紙は、氏子の信仰に合わせて多くの種類があり、神職によっては数十種類にものぼります。多彩な切り紙は特定の神を招くための依り代(よりしろ)であり神に捧げる供え物でもあります。例えばイロリに供える幣束には自在鉤が描かれるように、幣束を供える対象が上部の「鏡」や下に延びる「紙垂(しで)」に表現されます。また、神棚飾りには餅や御神酒といった神への供え物や、恵比寿に供える鯛などが描かれます。
 ここでは信仰の切り紙の形態や意匠を通して、その信仰のありようを紹介いたします。