当館学芸職員が、日頃の調査・研究についてお話しします。

第1回 平成29年1月8日(日) 村上 一馬 「狼を畏れ、祀り、獲る」
 かつて狼は人や馬を食い殺す恐ろしい野獣であり、追い散らしたり、捕獲したりしなければならない対象でした。人びとは狼が襲ってこないように祈り、また敬意を払って祀るなどしてきました。こうした江戸時代や明治時代の歴史や習俗を紹介します。
 
第2回 平成29年1月15日(日) 及川 規 「資料の残し方・まもり方-保存科学の方法-」
 資料(文化財)を後世に伝えることは、博物館の大切な役割の一つです。しかし、資料は少しずつ劣化します。劣化を抑えるための様々な研究を行う分野を「保存科学」といいます。本講座では、保存科学の方法を用いた資料保存の実際について紹介します。

第3回 平成29年1月22日(日) 菊地 逸夫 「日本人とクジラ」
 特別展「日本人とクジラ」では取り上げ切れなかった内容を紹介しながら、捕鯨の歴史や宮城県とクジラとの関わりについて掘り下げてお話します。
        
第4回 平成29年2月5日(日) 笠原 信男 「南部神楽『信田妻・葛の葉』と歌舞伎・読本」
 
南部神楽は江戸時代後期に民衆が始めたとされ、演目は三番叟などの式舞、神話を題材にした神舞、伝説・物語を題材にした所作物があります。本講座では所作物の演目から「信田妻・葛の葉」に着目し、歌舞伎・浄瑠璃・読本といった芸能・文学との関連を考えます。

第5回 平成29年2月11日(土・祝) 相澤 秀太郎 「エミシはなぜ『蝦夷』と表記されたのか」
 古代エミシの漢字表記「蝦夷」は、いつ、どのような理由で創り出されたものなのでしょうか。この問題は、現在に至るまで古代史の学会でも明らかにされていません。本講座では、文献史料の詳細な分析を通して、みなさんと一緒に論証を試みようと思います。

第6回 平成29年2月19日(日) 芳賀 文絵 「古代の線刻壁画を守る-山元町合戦原遺跡の事例から-」
 宮城県山元町合戦原遺跡の横穴墓群玄室の一室から、人や鳥が描かれた古代の壁画が発見されましたが、壁画は現地保管が困難となり、他施設へ移設保存されることとなりました。本講座では、この壁画の移設で実施された保存処置を、他の古代壁画の保存についてもご紹介しながらお話します。
 
第7回 平成29年3月5日 (日) 今井 雅之 「田植えなき稲作-直播をめぐる稲作史-」
 早乙女が田植歌を歌いながら苗を植えていく姿は、日本の心の原風景のようにイメージされています。しかし、田植えをめぐる歴史を紐解いてみると、これは稲作の一つのあり方に過ぎないことが分かります。本講座では、田植えをしない稲作の歴史を紹介します。
 
第8回 平成29年3月12日(日) 相原 淳一 「貞観津波と多賀城城下-調査成果と課題-」
 「日本三代実録」に記された貞観津波。南北大路を覆う砂層の珪藻分析では海水性種は認められず、海水の影響については論じられないとされましたが、近年、外洋性珪藻を含むイベント堆積物が発見され始め、改めて貞観津波に関する検討が始まっています。