東北歴史博物館 TOHOKU HISTORY MUSEUM サイト入口 (FLASH)へ

利用案内-施設案内-今野家住宅-今野家住宅の正月飾り |

今野家の正月

12月15日 旧河北町皿貝の大日靈神社(おおひるめじんじゃ)でオショウガツサマを持ってくる。大日靈神は天照大御神(あまてらすおおみかみ)の別称である。
同神社では12月15日頃から500戸の氏子に毎年頒布する。先々代までは10軒ほどの宿が決まっていて、その家で幣束などを製作していた。今野家は宿のひとつで、3軒の別家分も合わせて宮司が切っていた。
現在はあらかじめ製作したものを配布している。幣束等のお礼は米1升。15日にうけた幣束はザルに入れ神棚に上げておく。
12月28日 午前に餅をつき、メンダマギを作る。木はモミジで枝は7本と5本のを使う。
午後は松迎え。松を迎える場所にはお供えを上げて拝む。
12月31日 午前に注連縄を作る。風呂に入り、身を清めてから、オカミで作業する。
日が変わる最後に、アクマハライの幣束を持って「アクマハライ、アクマハライ」と唱えながら各部屋を廻り、悪魔祓いをする。終わるとアクマハライの幣束は冠木門の近くに挿す。
正月から14日まで 神さまに膳上げする。①朝流し ②朝ごはん ③10時半 ④昼 ⑤夜の1日5回、正月から14日まで行う。雑煮はカジカだしでスジコ(ますのこ)・ダイコン・ニンジンを入れる。
7日 正月飾り(年神、輪飾り)を取り払う(かつては14日に明神様の脇に納めた)。七草粥。餅も焼く。
11日 「タウチショウガツ(ノウハダテ)」 暗いうちに起きて、モドツ(荷縄)や農作業で使う1年分の縄を作り、ダイドコロに掛ける。
14日 「オカドオクリ」(←小正月とはいっていない)。昼頃に餅を搗き、径6㎝程の丸餅をとってクリの木にさす。枝が12本で、平年の餅の数は12、閏年は13。木は160㎝くらい。これをオクノメイダマといった。
15日朝 オクノメイダマをハットシに飾る。餅はとって喰ったりもし、餅がすべてなくなったら木をおろす。
29 or 30日 「小年越」(今はしていない) 栗の木の柱にツタを巻き、門口に立てる。
2月1日~5日  コショウガツ(小正月)」ツタウルシの茎を葉を中心にして長さ20㎝ほどに切り、全ての神棚にあげる。また、膳に餅をいれ、拝んでまわる。
今野家の正月

主な展示場所と概要

■屋外

カブキモン(冠木門)
カブキモン(冠木門)

左右に枝が3段についたサンガイマツ(赤松の三蓋松)、中央に右撚りの注連縄をはり、ワラ製のシデ、紙製のシデとマツバを交互につける。門松と同じ意図として飾っている。

■ホンヤ内

オカミの正月飾り
オカミの正月飾り

トシガミ(年神)を飾るオカミの四周には注連縄を張る。注連縄は右撚りで、ワラ製のシデの間に、紙製のシデ、マツバを交互につける。

トシガミ(年神)
トシガミ(年神)

正月にまつる神。飾る場所はトシガミがつかさどるめでたい方角であるアキノホウ(明きの方)に向ける習いもあるが、今野家では毎年、オカミの西側に飾る。左撚りで先の細い縄の形をしたゴボウ(牛蒡注連)に、枝が3段についたサンガイマツ(赤松の三蓋松)、ヨダレ(左右のシデを4段に連ねた幣束)、基部を包んだ赤い布からなる

エビス・ダイコク
エビス・ダイコク

ともに福の神。神棚の右方にまつっている。両端にあるのはメンダマギで、モミジにダンゴや千両箱・大福帳などをつけて、福が舞い込んだ状態を表現している。ダンゴはイネの霊とする説もある。紙を加工して図案を切り抜いたのはキリコ(切り紙)で、大日靈神社(オオヒルメジンジャ)から他の幣束とともに受けている。末広(扇)・鮒(フナ)・鯛・枡(マス)などのおめでたいものがかたどられている。

タノカミ(田の神)
タノカミ(田の神)

下部が波打っている幣束は田ならしに馬にひかせたマンガ(馬鍬)をかたどっている。タノカミ(田の神)、あるいは馬の神さまであるオソウゼンサマ(蒼前神)をまつる。注連飾りは略シデとマツバをつけた輪どおし。

オクノメイダマ
オクノメイダマ

本来は15日朝に飾る。栗の木に12個の餅をつけたもの。

カマガミ・ハチホンベイ
カマガミ・ハチホンベイ

カマガミをまつっていた場所に、下部がイロリで使用する自在カギの形をした幣束を飾る。カマドガミ(竈神)を表す。その左にある8本の幣束はハチホンベイ(八本幣)である。今野家やこの幣束を出している大日靈神社でも何の神か不明としている。雄勝町葉山神社の宮司家ではカマドガミの近くにまつった8本の幣束をハッショウジン(八将神)としている。ハッショウジンは8人の神で、各々が関連している家屋建築・旅行などの方位の吉凶を司っている。ザルを置いた棚のオソナエはカマガミのもの。

ウス(臼)
ウス(臼)

かつては1把分のワラを敷き、枡に入れた米の上にお供え餅を置き、しめ縄をまわしたウスを伏せた。これをウスブセといった。ウスの上の桶には井戸から汲んできた水(正月用の特別な水で若水という)を入れ、正月の食事に用いた。

カケザカナ
カケザカナ

浜の地帯でかつてよく行われていた。今野家では昭和30年頃まで行っていた。棒は1年中掛けてあり、年末に正月に食べるものを掛けておく。食べる時は縄をはずして必要分を切ったらまた掛けておく。掛けるものは魚が中心で、年末になると正月用に浜の人が魚を持ってくる。今野家ではお返しは年始に餅を持っていった。他に納豆や凍み豆腐、昆布なども掛ける。掛けるための縄の数は家によって異なる。今野家は12本。掛ける順番は特になく、手に入れた順にワラで皿結びをして棒から垂れている縄に結ぶ。
今年は、左から ①ハゼ ②ボッケ ③カレイ ④タラ ⑤サケ ⑥サケ ⑦サケ ⑧サケ ⑨カレイ ⑩ハゼ の5種類。端に輪どおしを掛けている。

オカミの正月飾り 
モドツ

1月11日につくったものを結んで掛けておく。
結び方は向かって左から右へ①淡路結び ②石畳 ③皿結び ④三角結び ⑤宝結び

他の幣束

ミョウジン・イドノカミ(井戸神)・ヤマノカミ(山神)・アクマハライ(悪魔祓い)がある。アクマハライは12月31日夜、各部屋の悪魔祓いをしてから幣束をカブキモンの脇に挿すのが本来の方法である。ウジガミは狐の形をした幣束で、輪どおしと一緒に飾る。なお、ヤマノカミ(山神)は展示していない。

他の輪どおし

チューモン・ベンジョ・フロ・キゴヤには略シデとマツバをつけた輪どおしを飾る。