
このたび、塩竈生まれの医師西川正直(にしかわまさなお)氏が収集した工芸品コレクションが当館に寄託されました。西川氏は医師として活躍するかたわら工芸品をこよなく愛し、コレクションを充実させてきました。そのコレクションは洋の東西を問わず多種多様な工芸品からなることで知られるものです。なかでも、陶磁器、ガラス製品、漆工品、金工品などは質量ともに豊富で学術的に貴重なだけでなく、見る人の目を飽きさせません。
今回の展示では、西川コレクションを代表する資料群のひとつとして高く評価される鼻煙壺(びえんこ)を紹介します。鼻煙壺とは嗅(か)ぎタバコを入れる容器です。嗅ぎタバコとはタバコの粉末を鼻孔から直接吸い込んでその刺激や香りを楽しむもので、その風習はヨーロッパからアジアに伝わり、中国の清朝に流行しました。
清朝の鼻煙壺は主にガラス、磁器や貴石など、美しく高価な素材からなります。いずれも小さいながら、豊かな色彩を誇るもの、細かな文様を描いたもの、精密な彫刻を施したものなどが多く、みどころに事欠きません。
この展示で、当時の人々が掌(てのひら)にとって愛(め)でた小さな工芸品の魅力をご堪能いただけたら幸いです。
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